2026年9月2日、一般社団法人 関西GX推進協議会は、尼崎商工会議所様が主催されたセミナーにて「運輸物流業界におけるGXへの対応について──2024年問題の、次に来るもの」をテーマに講演を行いました。登壇したのは理事の安住宗一郎。GXを環境対策としてではなく、人材不足・燃料コスト・荷主対応という企業が直面する経営課題から考える内容として構成しました。
一般社団法人 関西GX推進協議会(代表理事:宇都宮涼子、以下「KGX」)は、2026年9月2日、尼崎商工会議所様が主催するセミナーにて、運輸・物流業界を対象とした講演「運輸物流業界におけるGXへの対応について ── 2024年問題の、次に来るもの」を実施しました。登壇したのは、当協議会理事の安住宗一郎(株式会社Blue代表取締役)です。当日は、運送・倉庫・鉄道・バス・業界団体など、運輸・物流に関わる企業・団体の皆さまに向けて、GX(グリーントランスフォーメーション)を単なる環境対策としてではなく、人材不足、燃料コスト、荷主・取引先への対応など、企業が実際に直面している経営課題から考えることをテーマにお話ししました。
講演の概要
| 主催 | 尼崎商工会議所 |
|---|---|
| 開催日 | 2026年9月2日(水) |
| 登壇者 | 安住 宗一郎(一般社団法人 関西GX推進協議会 理事 兼 事務局事業推進総統括/株式会社Blue 代表取締役) |
| テーマ | 運輸物流業界におけるGXへの対応について ── 2024年問題の、次に来るもの |
| 対象 | 運送業・倉庫業・鉄道バス事業者・業界団体の経営者の皆さま |
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「環境のため」ではなく、「経営のため」にGXを考える
今回の講演で最初にお伝えしたのは、
「今日は環境の説教をしません。皆さんの商売の話をします」
ということでした。GXという言葉から、地球温暖化や脱炭素、難しい制度の話をイメージされる方も少なくありません。しかし、企業にとって重要なのは、GXという言葉そのものを覚えることではなく、それが自社の経営とどう関係するのかを理解することだと、私たちは考えています。そこで今回の講演では、現在の運輸・物流業界で起きている変化を、「ヒト」「コスト」「信用」という3つの経営課題から整理しました。
ヒト ― ドライバーをはじめとする人材不足
運輸・物流業界では、ドライバーをはじめとした人材不足が大きな経営課題となっています。講演では、ドライバー職の有効求人倍率が全職業平均を大きく上回っていることや、2030年度には営業用トラックの輸送能力が最大34%不足する可能性があるとの試算(株式会社NX総合研究所)を紹介しました。「車両があっても、運転する人がいなければ動かせない」。人材の確保や採用は、運輸・物流業界の事業継続そのものに関わるテーマになっています。
コスト ― 止まっている間にも燃料は使われている
二つ目が、燃料をはじめとしたコストです。講演では、アイドリング時にも燃料が消費され続けるという一般的な目安を紹介し、荷待ちなどの停止時間が積み重なることで、企業にとって無視できないコストになる点を解説しました。
信用 ― 荷主・取引先から「CO₂の数字」を求められる時代へ
三つ目が、荷主・取引先との関係です。講演では、取引先からCO₂排出量などの情報提供を求められた中小企業の割合が近年増加しているという調査結果を紹介しました。自社が制度の直接的な対象ではなかったとしても、荷主が対象となることで、そのサプライチェーンにある企業へ情報提供などの要請が及ぶ可能性があります。今回の講演では、こうした「法律や制度は荷主に当たり、その対応が取引先へつながっていく構造」についても解説しました。
「脱炭素」と「GX」は、同じ意味ではありません
では、そもそもGXとは何なのでしょうか。今回の講演では、脱炭素とGXの違いを次のように整理しました。
脱炭素は、CO₂を減らすこと。いわば企業に課された「宿題」です。
一方で、GXは、その宿題を「経営の武器」に変えていくこと。
燃料使用量を減らすことで、コストが下がる。自社の排出量を把握することで、荷主や取引先からの要請に対応できる。環境やGXへの取り組みを適切に伝えることで、採用や企業への信用につなげる。「CO₂を減らすこと」だけを目的にするのではなく、それを企業経営にとっての価値へ変換していく。今回の講演では、この考え方を、
「GXとは、経営の燃費改善です。」
という言葉でお伝えしました。
GXの第一歩は、「自社の数字を知ること」
GXという言葉を聞くと、「専門的で難しい」「大企業が取り組むもの」という印象を持たれることがあります。しかし、最初から大きな設備投資や専門的な取り組みを始める必要はありません。今回の講演では、参加者の皆さまにもスマートフォンの電卓を使っていただき、
年間の軽油使用量(L)× 2.58 = 年間CO₂排出量(kg)
という計算を実際に行っていただきました。例えば、年間10万リットルの軽油を使用する場合、CO₂排出量は約258トンという計算になります。「CO₂排出量を出してください」と言われると難しく聞こえます。しかし、自社がすでに持っている燃料使用量などの数字から把握できるものもあります。まず測る。そして、自社の現在地を知る。ここからGXは始まります。
人材不足、コスト、信用。経営課題の延長線上にGXがある
一般社団法人 関西GX推進協議会では、GXを企業に新しい負担を増やすものではなく、企業がすでに抱えている経営課題を解決するための一つの手段として捉えています。今回取り上げた「ヒト」「コスト」「信用」という3つの課題も、GXと切り離されたものではありません。人材確保。燃料・エネルギーコスト。荷主・取引先への対応。企業としての情報発信。それぞれの経営課題を解決していくことが、結果としてGXにつながっていく可能性があります。講演では、その考え方を具体的な行動に移す取り組みとして、関西GX推進協議会が進めるプロジェクトについても紹介しました。
ドライバー不足という経営課題から生まれた「ドライバーブリッジ」
その一つが、運輸・物流業界における人材不足、特にドライバー採用という課題に向き合う「ドライバーブリッジ」です。ドライバーブリッジは、ドライバーをはじめとする物流人材と企業をつなぐ採用支援の取り組みです。今回の講演でも、「ヒト」という経営課題に対する具体的なプロジェクトの一つとして紹介しました。GXというと、太陽光発電や省エネルギー設備、CO₂削減などを想像しがちです。しかし私たちは、人材不足も企業が持続的に事業を続けていくうえで避けて通れない経営課題だと考えています。企業の課題から出発し、その解決策をつくる。その結果として、より持続可能な企業や産業につなげていく。ドライバーブリッジも、その考え方から進めているプロジェクトの一つです。
企業のGXを「伝える」ところまで考える「サステナブルWeb」
もう一つ、今回の講演で紹介したのが「サステナブルWeb」です。企業がGXに取り組んでいても、その活動が取引先や求職者、地域、社会に伝わっていなければ、企業価値や信用へ十分につながらない場合があります。また、Webサイトそのものにも、データ通信やサーバー利用などを通じた環境負荷があります。関西GX推進協議会では、Webサイトの軽量化など環境負荷への配慮と、企業のGX・サステナビリティへの取り組みを適切に伝える情報発信のあり方についても取り組みを進めています。
今回の講演では、ドライバーブリッジ、サステナブルWebといった具体例を通じて、「ヒト」「コスト」「信用」それぞれの経営課題からGXを考えることができるということをお伝えしました。
「測る・試す・育てる」――関西GX推進協議会が目指すGX
一般社団法人 関西GX推進協議会では、企業のGXを実装していくための活動を、大きく3つに整理しています。
- 測る。CO₂排出量の算定などを通じて、自社の現在地を把握する。
- 試す。GXにつながる製品・サービス・技術を実際の現場で実証し、導入につなげていく。
- 育てる。GXを理解し、社内外で動かすことのできる人材を育成するとともに、企業の取り組みを適切に情報発信していく。
私たちが目指しているのは、環境問題だけを切り離して解決することではありません。企業の経営課題を解決していく中で、結果としてGXが進む。その仕組みを、関西の企業・地域・現場とともにつくっていくことを目指しています。
異なる専門領域を持つ企業・人材が連携してGXを実装する
関西GX推進協議会では、一つの専門領域だけでGXを捉えるのではなく、さまざまな企業・専門人材が連携しながら、企業の課題に応じたGXの実装を進めています。今回の講演には、登壇した理事 兼 事務局事業推進総統括・安住宗一郎をはじめ、次のメンバーが参加しました。
- 一般社団法人 関西GX推進協議会 理事 兼 事務局事業推進総統括 安住宗一郎/株式会社Blue 代表取締役
- 一般社団法人 関西GX推進協議会 代表理事 宇都宮涼子/株式会社ガトアート 代表取締役
- 一般社団法人 関西GX推進協議会 理事・事務局長 遠藤翼/株式会社Unlimited Work Place 代表取締役
- 一般社団法人 関西GX推進協議会 事務局 事業推進マネージャー/株式会社Inventive Partner 中垣内健太
それぞれが持つ経営、人材、テクノロジー、Web、デザイン、情報発信などの知見を掛け合わせながら、GXを「環境だけの話」で終わらせず、企業経営の現場で実際に使えるものへ落とし込むことを大切にしています。
企業・業界に合わせた「実務につながるGX勉強会」へ
今回の講演では、GXについて初めて触れる方にも全体像を理解していただけるよう、「なぜ今、企業にGXが関係するのか」という総論を中心にお話ししました。しかし、企業が実際にGXを進めていくためには、その先にある「実務」が重要になります。
一般社団法人 関西GX推進協議会では、今後も企業や業界が抱える課題に合わせて、GXを経営と実務へ落とし込むための勉強会・研修・講演・情報発信に取り組んでいきます。例えば、CO₂排出量の算定・可視化、補助金・助成金の活用、GX人材の育成、採用・人材不足とGX、エネルギーやコスト削減、企業のGX・サステナビリティに関する情報発信など、さまざまなテーマが考えられます。
今回の運輸・物流業界に限らず、それぞれの業界や企業が抱えている課題を入口として、「GXとは何か」を学ぶだけではなく、「では、自社は何から始めるのか」まで持ち帰ることのできる場をつくる。それが、私たちが目指すGX勉強会です。
※今後の具体的な勉強会・研修のテーマや開催内容については、企業・商工会議所・業界団体等の課題やご要望に応じて企画・検討します。現時点で個別の開催を確定しているものではありません。
「一社に一人、GX人材を。」
そして今回、講演の最後にお伝えしたのが、
一社に一人、GX人材を。
という言葉です。GXへの対応には、荷主・取引先からの要請への回答、排出量の算定、採用やコストに関する打ち手の選択、補助金・助成金の検討など、さまざまな実務が関係します。これらすべてを経営者が本業の傍らで担い続けることは、決して簡単ではありません。講演では、脱炭素の担当者を設置している中小企業がまだ少数にとどまっているという調査結果もあわせて紹介しました。
だからこそ、これからの企業には、「GXについて理解し、自社に必要な情報を判断し、必要な人や専門家につなぐことのできる人」が少しずつ必要になってくると私たちは考えています。その方法は一つではありません。社内で育てる。あるいは、必要な専門性を社外から借りる。どちらでも構いません。重要なのは、「誰も分からない」という状態のままにしないことです。
GXを「分かる」から「できる」へ
自社が制度の直接的な対象ではなくても、荷主や取引先を通じてGXへの対応が求められる可能性があります。だからといって、すべてを一度に始める必要はありません。今回の講演でお伝えした最初のステップは、とてもシンプルです。
- 請求書を集める。電気、ガス、燃料など、自社がすでに持っている数字を把握する。
- 社内で担当する人を一人決める。
- 小さく始めて、成果を出す。
まずは自社を知るところから始める。そこから必要な対策を考え、実行し、企業の価値へと変えていく。これが、関西GX推進協議会が考えるGXへの第一歩です。
一般社団法人 関西GX推進協議会では、今後も企業・商工会議所・業界団体・地域の皆さまと連携しながら、GXを「難しい環境の話」で終わらせず、企業経営の現場で実際に使えるものへ変えていく活動を進めてまいります。企業・団体・業界向けのGX勉強会、研修、講演についても、それぞれの業界や経営課題に応じた内容を企画してまいります。
GXを「分かる」から「できる」へ。
そして、一社に一人、GX人材を。
主催者の皆さまへ
このたびは、貴重なセミナーの機会をいただきました尼崎商工会議所の皆さまに、心より御礼申し上げます。運輸・物流業界の現場で日々奮闘される皆さまとの対話は、私たちにとっても大きな学びとなりました。今後も、業界の現場に即したGX実装の伴走を続けてまいります。
一般社団法人 関西GX推進協議会 概要
| 正式名称 | 一般社団法人 関西GX推進協議会(英語表記:Kansai GX Promotion Council) |
|---|---|
| 設立 | 2025年8月15日 |
| 法人形態 | 非営利型 一般社団法人 |
| 所在地 | 〒541-0048 大阪府大阪市中央区瓦町1丁目6-1 シティタワー大阪2208 |
| 代表理事 | 宇都宮 涼子(株式会社ガトアート 代表取締役/GXアーティスト) |
| 事業内容 | GX導入・経営支援/CO₂排出量算定・カーボンクレジット活用・オフセット支援/補助金・助成金活用支援/GX人材育成・社内浸透/共創・ネットワーク推進/広報・PR・認知支援 |
| 公式サイト | https://kgxpf.or.jp/ |
よくあるご質問
GXと脱炭素は、何が違うのですか。
脱炭素はCO₂を減らすこと、いわば企業に課された「宿題」です。GXは、その宿題を経営の武器に変えていく考え方を指します。コスト削減、荷主対応、採用力の強化など、経営課題の解決を通じてGXを進めていくのが当協議会の立場です。
自社の排出量は、何から計算すればよいですか。
多くの場合、燃料使用量から始めます。目安として「年間の軽油使用量(L)×2.58=年間CO₂排出量(kg)」という簡易計算があります。まずは自社がすでに持っている数字を集めることが第一歩です。
自社が制度の対象でなくても、GXへの対応は必要ですか。
直接の対象でなくても、取引先である荷主企業が制度の対象になれば、その要請がサプライチェーン上の取引先へ及ぶ可能性があります。早い段階で自社の現在地を把握しておくことをおすすめしています。
「ドライバーブリッジ」とはどのような取り組みですか。
運送・倉庫業界の人材不足という経営課題に向き合う採用支援プロジェクトです。詳細はサービスページをご覧ください。
勉強会・講演の開催を依頼できますか。
はい。業界団体・自治体・企業向けに、現場に即したGX勉強会/セミナーの開催や、理事への講演・取材を承っています。下記お問い合わせ先までご連絡ください。
本件・勉強会のご依頼に関するお問い合わせ先
一般社団法人 関西GX推進協議会 広報担当
Email:info@kgxpf.or.jp
お問い合わせフォーム:https://kgxpf.or.jp/contact/
公式サイト:https://kgxpf.or.jp/
※業界団体・自治体・企業向けのGX勉強会/セミナーの開催、理事への取材・講演のご依頼を承っています。運輸・物流業をはじめ、各業界の現場に即した内容でご提供します。お気軽にお問い合わせください。
※本文中で紹介した統計・数値は講演内で引用した一般的な調査データです。出典・最新値は個別にご確認のうえご利用ください。


